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アメリカ商標法解説(5)商標権の発生・・・権利の種類
重畳的に存在する3つの商標権
米国では、日本とは異なり、商標権は原則として「商標の商取引における使用(Use in Commerce)」により発生します。これがコモン・ロー上の商標権です。商標権発生に際し、設定登録といった行政処分が不要である点で、日本の商標制度とは大きく異なります。
一方で、米国にも日本と同様に設定登録によって権利を発生させる連邦商標登録の制度があり、さらには各州に商標制度に基づく州登録もあります。
具体的には、米国における商標権は、「コモン・ロー上の権利」、「州商標法により発生する州登録に基づく権利」、そして「連邦商標法により発生する連邦登録に基づく権利」の3種類があります。それぞれ、商標権発生の原因、認められる地域的範囲において相違します。
権利の種類 | 発生の根拠 | 権利の発生 | 権利範囲(地域) |
コモン・ロー上の商標権 |
コモン・ロー (判例法) |
商取引における使用 | 実際に商標が使用されている地域に限定される。 |
州登録に基づく商標権 |
州の商標法 (制定法) |
商標登録(ただし、商取引における使用が必要) |
登録されている州に限定される。 |
連邦登録に基づく商標権 |
ランハム法 (制定法) |
商標登録(ただし、商取引における使用が必要) |
米国全土に及ぶ。 |
権利の強さに差はない(最先の使用者が優先)
これらの権利は、それぞれ重畳的に存在し得ます。なんとなく「連邦登録に基づく商標権」が一番強いように思いがちですが、そうではありません。立証責任の容易性や権利の地位的範囲で相違するものの、これら権利が抵触した場合には、最先の使用者が優先することになります。