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メタバース・NFTと商標 今話題のテーマを解説

1.「メタバース」とは何か

メタバースとは、英語の「超越(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語です。

メタバースについて、現在のところ厳密な定義はなく、人によって、また使用される文脈によって異なることもありますが、「オンライン上に作られた三次元の人工的現実(virtual reality)」であって、「利用者自身がアバターとして参加し、他のユーザーと自由にコミュニケーションしたり、創作したり、また創作物を交換したりできる空間」といえそうです。

「Microsoft Mesh」(https://docs.microsoft.com/ja-jp/mesh/mesh-app/)

 

VRヘッドセットを使用することで、より臨場感をもってメタバース空間を体験することができます。百聞は一見にしかずということで、筆者も早速「META QUEST2(旧Oculus Quest)」を購入し、メタバース空間を堪能しています。さすがに、まだ現実と区別がつかない、とまではいきませんが、奥行きや細部もリアルに再現され、かなりの没入感でした(↓メタバース体験中の筆者 小暮君平)。

メタバースの具体例として、「フォートナイト」や「あつまれ どうぶつの森」といったオンラインでユーザー交流ができるゲームが挙げられることがあります。しかしながら、これらはユーザーが自由にものを作ったり、企画することはできず、様々なイベントやアイテムは、あくまでもプラットフォーマーである任天堂などの管理下にありました。いわゆる旧型のメタバースといえます。

 

一方で進化形のメタバースでは、そのようなプラットフォーマーの厳格な管理から離れ、クリエイターがメタバース環境の中でアバターやアイテム等を創作して他人に公開したり、ユーザー主体でイベント開催やグッズ販売などが行われるといった形で、ユーザーの自由度が上がっています。さらに、旧来型のメタバースでは3Dの処理はされていたものの平面的である一方で、進行型のメタバースではVRヘッドセットによって立体的に感じることができます。このような進化形のメタバースとしては、海外のものでは「VRChat」や「THE SANDBOX」「Decntraland」、日本では「Cluster」が代表例です。THE SANDBOXなどでは、メタバース内の土地などもNFT化されて取引されています。

 

2.「NFT」とは何か

NFTとはNon-Fungible Tokenの略語であり、「非代替性トークン」のことを言います。メタバースと関連づけて語られることもありますが、メタバースに必須のものではありません。このNFTにより、これまでコピーが容易であったデジタル画像について、唯一無二性を証明できるようになりました(これまで同様、画像の複製自体は可能ですが、ブロックチェーン技術を使うことで、流通過程の真正性を証明します)。NFTの登場によって何が変わったかというと、デジタル画像に交換価値が生じたことです。

 

当初、NFTはコレクターズアイテムとしてのデジタルなトレーディングカードとして活用されたりしていましたが、その後デジタルアートの分野に広がり、「Beeple」によるデジタルアート「Everydays – The First 5000 Days」が約75億円で取引されたことで、世間の注目を浴びました。

 

メタバースとの関係でいうと、クリエイターが創作したアバター用のファッションアイテムなどを、メタバース内で自由に販売したり、交換したりすることが可能となる中で、これらをNFT化することで、クリエイターが創作物から収益を上げられるようになります。

 

3.商標との関係

メタバースが出現する前は、クリエイターが独自のアバターやアイテムを作成したり、それを流通させたりすることができなかったたため、商標法上の検討は不要でした。

 

しかしながら、アバター画像等がNFT化されて二次流通も可能となる中で、メタバースと相性の良いファッション関連で、実際に商標法上のトラブルが発生するようになっています。

 

特に、これまでデジタル世界の話として語られていたNFTが、商標権の争いとしてリアルの世界に飛び出した、米国における「ナイキ社」と「StockX社」の商標権侵害訴訟は、全世界の商標実務家の間でも大きな話題となりました。StockX社は、ナイキの現物のスニーカーと交換ができるNFTを販売していたものであり(商品自体はStockXの倉庫に保管されつつ、NFTの取引によってスニーカーの二次流通が行われる)、メタバースで利用できるデジタルスニーカーを販売している訳ではありませんでした。しかしながら、このNFTの画像には、取引対象となるナイキ製スニーカーの写真が使用されていることから、ナイキ社としては、ナイキ社が発行するNFTと混同を生じさせるものであり、またナイキブランドの著名性を希釈さることを問題視しました。

 

ところで、その後の2021年12月にナイキ社自身が、仮想スニーカーデザインを手掛けるRTFKT(アーティファクト)とのコラボレーションにより、NFTスニーカーの販売開始を発表したことから、StockX社への訴訟は、このプロジェクトが念頭にあったのかもしれません。なお、このNFTスニーカーは約1300万円で取引されたもの出てきていますが、アバターに着用させることなどはできず、あくまでもコレクターズアイテムとして扱われています。

 

4.商標実務への影響

メタバース内で使用・交換可能なアバター画像や、アバターが着用できるファッションアイテム(服、帽子、靴、サングラス、アクセサリーなど)について、実際に販売が行われているものは限られていますが、この分野で先を行く米国では、将来を見据えて「Downloadable virtual goods, namely computer program featuring footwear(ダウンロード可能なヴァーチャルグッズ、すなわち、靴類に関するコンピュータプログラム)」のような表現で、第9類の商品として出願が行われています。

また、そのようなヴァーチャルグッズの小売販売は第35類で、ダウンロードせずにオンラインゲーム内に限られるグッズについては第41類(オンラインゲーム)や第42類(ダウンロードできないコンピュータプログラム)として出願されています。

 

具体的には、メタバースにおいてアバターが身に着けるアイテムに自社の商標が使用される場合や、クリエイターが創作したバーチャルグッズを小売販売するショップの屋号として商標を使用する場合などに、商標登録出願を行う必要性が生じます。

 

(ナイキ社による米国商標出願第97096366号)

 

【商標に関するご相談】

この分野における商標登録は始まったばかりであり、「どの範囲で権利化すべきか」「指定商品の表現は?」といった点は、今後の実務の蓄積が待たれます。弊所でも、ヴァーチャルグッズやNFTに関する商標登録出願を取り扱った実績があります。メタバース関連の商標権取得に関心がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。