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BREXITの影響について改めて考える

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先日、英国のメイ首相が欧州単一市場からの撤退を正式に表明した。これにより遅くとも2019年3月には、英国はEUから完全に離脱することになる。この機会に、改めてEUTM商標実務における英国離脱(BREXIT)の影響を整理したい。

1.現在係属中の出願について

英国がEUから離脱する2019年3月までは、EUTM出願は有効である。したがって、現在係属中の出願については、特別に懸念することはない。ただし、下記のような移行措置が取られた場合、一次的に英国の権利が失われる(出願状態になる)こともあり得るため、英国でのビジネスが重要であって、迅速な権利行使が必要となることが予想される場合には、現時点で英国登録を得ておくことが良いと思われる。

2.BREXIT後のEUTMの取り扱い

最も影響があるのが、BREXIT後におけるEUTM登録・英国保護への影響であり、実務家の間で特に注目されているのか下記のポイントである。

「商標使用の範囲の問題」

問題となるのは、EUTM実務における、不使用取消審判に対抗できる「真正な使用(genuine use)」の地域的範囲の解釈である。ONEL判決で示された解釈基準は「EU加盟国1か国における使用では、必ずしも十分ではない」とされているのみである。使用されている国が何か国であれば良いという基準は無く、解釈は「その商品・役務の性質上、真正に使用していると判断され得る地域的範囲か否か」ということが基準となる。この点、主として英国で使用されているEUTMについては、英国がEUから離脱した後、地域的範囲の解釈上、実質的に不使用状態となり、不使用取消により取り消されるリスクが生じると言える。したがって、このような場合には、別途、英国単独の保護を得るべきであり、またEUTM登録の不使用取消を当面は避けたいということであれば、EUTM出願を再出願しておくことも一案である。、

「代理権の問題」

EEA(European Economic Area)の加盟国の事務所は、EUIPOに対するEEA域外の出願人の手続きを代理する資格を持つ。EUの加盟国であれば同時にEEAにも加盟していることになるが、逆に、EUから離脱するとEEAの非加盟国になり、結果としてEUIPOに対する手続きを代理する資格を失うことになる。したがって、英国の特許事務所で管理しているEUTMについて、無効審判等を受けた場合に、管理している英国事務所には代理権が無いといった状況が生じることが予想され、権利者にとっては新たな事務所を選定するといった労力がかかることになる。ただしこの点については、EEA域内の拠点新設によって代理資格を維持することで、実質的に問題を回避することは可能であり、今後、そのような拠点新設や事務所合併の動きが出て来ることが予想される。

「使用言語の問題」

規則により出願・異議申立等の手続きはEUの公用語(英語を含む24言語)により行わなければならないが、英国以外に英語を公用語の第一言語としている国は無いため、英語が手続を行うための公用語から外れてしまうのではという懸念も提起されている。しかしながら、英語はEU地域内で共通語のごとく使用されているのが現状であるため、引き続き英語で手続きができるように何等かの対応が取られるのではないか、と思われる。

「英国保護部分の今後の取り扱いの問題」

そして最も大きな関心は、現在EUTMによって英国に及んでいる商標権の取り扱いである。これについては、何等かの移行手段が取られ、混乱が最小限に抑えられる措置が模索されることになる。移行手段は、その内容・手法によっていくつか考えられるが、Chartered Institute of Trade Mark Attorneys (CITMA)が移行手段の選択肢の可能性として、下記のようなものを挙げている。

https://www.citma.org.uk/membership/eu_resources/eu_brexit/eu_registered_rights_-_trade_marks

1.EU Plus

EUTMは、もはやEU限定の仕組みではなく、英国その他の国を含む制度として再定義される。ただし、これには国内法及びEU関連規則の整備が必要である。

2.Jersey Model

英国は、EUTM登録を英国でも有効な権利であるとして一方的に認め、英国登録簿への設定登録は伴わない。ただしこの場合、国内法の整備が必要である。ただし、EUTM登録が英国においても実質的に効力を有する以上、先行する英国登録を基礎としてEUTM登録の(少なくとも英国保護部分の)無効を請求するといった事情も生じることも予想され、権利の交錯にうまく対応させなければならない。

3.Montenegro Model

英国は、EUTM登録を英国でも有効な権利であるとして認める点はJersey Modelと同じであるが、英国に登録簿への設定登録を伴う。やはり国内法の整備が必要である。

4.Tuvalu Model

EUTM登録の権利者は、一定期間内に英国への権利拡張手続きを行う。この期間を過ぎると、英国への保護拡張の手段は無くなる。一定の時期に権利関係を一気に整理することができる点ではすっきりする。

5.Veto(拒否)

EUTM登録の権利者は、一定期間内に英国への権利拡張手続きを行う点でTuvalu Modelと同じであるが、英国は無条件に保護を認める必要はなく、審査により拒絶をする権限を有する。

6.Ireland Model

EUTM登録の更新の際に、新たに英国登録が形成されるというものである。更新までの権利の取り扱いについては、別途定める必要がある。

7.Conversion

現行のEUTM規則に従い、EUからの離脱により失効した英国保護部分について、優先的効力を維持しながら新規出願への変更を認める。この場合、一次的に英国保護が「出願状態」となるため、迅速な権利行使に支障が出ることもあり得る。すでに制度が確立されているので、この中では移行の衝撃が最も限定的と思われる。

3.実際に英国代理人に聞いてみると。。。

英国代理人にとっては、仮にEUIPOでの代理権を失えばEUTMに関する仕事を失うことになりかねない。その点で不利益もあるのではないかと思ったのだが、実際に話して聞いてみると、それほど悲観的な感じではなく、むしろ司法制度が元に戻る点で歓迎しているようである。英国はコモンローの伝統があるので、大陸法の影響も受けるEUの欧州裁判所の判断に従うのは、何となく違和感があるのだろうか。

 

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