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マドプロ利用のメリット・デメリット(メリット編)

マドプロ利用のメリット・デメリット(メリット編)

マドリッドプロトコルの国際的な利用度合

外国(海外)に商標登録出願をするにあたり利用できる国際出願制度として「マドリッドプロトコル」(以下、マドプロ)がある。

下記は、2015年版の「特許行政年次報告書」に掲載されている、2014年において海外から日本に出願された商標登録出願の国籍別統計より、上位からトップ10までについて弊所でまとめたものである。ご覧のとおり、欧州だと日本への出願の7割くらいがマドプロ利用によるものであり、その利用度は高い。一方、出願トップの米国の利用度が少ないのは、出願基礎として使用意思を選択していた場合に「セントラルアタック」のリスクがあるからであり、また、米国実務にしたがって指定商品・役務が限定されているため、海外でより広い範囲で権利化したい場合に不向きだからである(韓国について利用度が低い理由は不明で、韓国弁理士の友人に問い合わせ中である→確認したところ、韓国では国内出願と同時に外国出願を行うことが多く、国内出願の拒絶によるセントラルアタックを避けるため、マドプロではなくて直接出願する傾向があるとのことである)。

国名 日本への全出願数 うち、マドプロ経由 マドプロ利用率
1 アメリカ合衆国 7,193 2,436 33.8%
2 ドイツ 1,962 1,647 83.9%
3 スイス 1,590 1,159 72.8%
4 韓国 1,578 314 19.8%
5 フランス 1,535 1,179 76.8%
6 中国 1,521 781 51.3%
7 イギリス 1,496 1,064 71.1%
8 イタリア 1,165 1,003 86.0%
9 台湾 708 0 *マドプロ未加盟
10 オランダ 499 329 65.9%

日本人の利用度合いであるが、国際登録出願(マドプロ出願)の件数は、統計によると2,127件(2012年)、1,881件(2013年)、1,999件(2014年)と横ばい傾向にあるが、外国出願全体に占めるマドプロ利用の度合いに関する統計は公表されていない(全指定国の数値を足し合わせる必要があるため)。実感としては、今までマドプロ利用を躊躇していた大企業が、少しずつ利用を始めている感はある。

マドリッド・プロトコル利用によるメリット

1.出願コストの削減

最大のメリットは「出願コストの低減」である。マドプロの場合、日本国特許庁に国際出願をすれば、指定した各国の特許庁(指定国官庁)に願書の内容が直接送付(通報)されることになるため、間に各国の特許事務所を介在させる必要がないことから、外国の特許事務所の手数料を削減することができる。このコスト削減効果は大きなものがあり、一般的には各国代理人の手数料は5万円~10万円(一区分の場合)であることから、指定する国が多い程、直接出願と比較した場合の相対的コスト削減効果が得られる。さらに、マドプロ出願は、指定する国が複数あっても一通の願書で済ませることができるので、日本の特許事務所の手数料も、各国で別々に直接出願するよりも大幅に下がる傾向がある。したがって、指定国が10か国くらいあれば、直接出願するよりも100万円くらいの差が出るものと思う。

<直接出願の場合のルート>

日本の特許事務所→外国の特許事務所→各国特許庁

<マドプロの場合のルート>

日本の特許事務所→(日本国特許庁で受理)外国の特許事務所→指定国官庁

さらに、コスト削減効果は出願時だけではない。直接出願した場合には、公告公報発行や、登録証発行の段階でも現地代理人の手数料が発生するし、また直接出願であれば求められる登録費用の納付が無い国もある。この点、出願時の庁費用に登録費用までが含まれていることがあるが、少なくとも登録料納付に関する現地代理人費用はカットすることができる。

2.更新管理負担の軽減

さらに、登録後の更新手続も国際登録全体を一件として手続きができる。各国出願の場合、それぞれ別の登録となり存続期間満了日もばらばらに設定されることから、国数に応じた更新期限管理が必要となる。一方、マドプロにあっては、国際登録単位で更新手続きすれば良いので更新管理管理負担はぐっと減る。さらには、各国の代理人を経由せずに、国際登録全体を一件として更新手続ができるので、ここでも大幅なコスト削減効果がある。

3.審査期間の見込みが立つ

マドプロの規定では、指定国官庁は12か月(又は、各国の宣言により18か月)以内に拒絶の通報をしない限り、その指定国において商標の保護が確定することになる。指定国官庁の中には、例えばエジプトなど、審査が終わるまで3年程度はかかる国もある。そのような国であっても、出願から少なくとも18か月までには審査の結果が判明することになるので、このような審査遅延国については「審査期間が迅速化する」とも言える。

4.事後指定の利用

国際登録がされた後に追加で指定国を増やしたい場合には、ゼロから出願するのではなく、既存の国際登録に指定国を追加する「事後指定」により出願することができる。この事後指定の手続きは簡便であり、直接出願をする場合に比べて、手続面と費用面でメリットがある。

5.  優先権主張費用に付随する費用がかからない

基礎となる日本出願の日から6か月以内であれば、パリ条約上の優先権主張が可能であるが、その際、願書において優先権主張をする旨及び基礎出願番号等を記載するだけで良く、追加費用の支払いを求められることはない。さらに優先権証明書を提出する必要もない。このことは、直接出願と比較すると、

  • 各国特許庁(及び現地代理人)に支払う優先権主張費用がかからない
  • 優先権証明書を日本国特許庁に発行を依頼する必要がないので、発行に必要な印紙代がかからない
  • さらには、優先権証明書の翻訳も不要となる

というメリットにつながる。

6.米国指定については、使用証明をすることなく登録証が発行される

最後に、米国については、マドプロ出願に際してMM18による「誠実な使用意思」を宣誓することで、米国で使用をしていなくても、登録証が発行される。直接出願の場合には、原則として米国で使用を開始しない限りは登録証が発行されないので、使用を開始するまでの使用宣誓書提出期限の延長を行う必要がなくなる。なお、米国は使用主義を採るので、登録証が発行されたとしても、実際に使用が行われてない場合には権利行使はできない点に留意する必要はある。

以上がマドプロ利用の主なメリットであるが、反面、利用にあたって認識しておきたいデメリットもあるので、次回のコラムで紹介したい。

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