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ところで、米国の使用宣誓書は、どれくらい正しく提出されているのか?

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使用主義の米国

米国商標の更新・維持実務において、毎回、出願人・権利者を悩ませるのは「使用宣誓書」である。使用主義を基調とする米国の商標制度では、出願の登録・維持に際して、出願・登録された商標を、米国内において、指定商品・役務に関して使用していることが求められる。米国において商標が使用されていない場合、または、使用が中止されてしまった場合には、残念ながら出願は拒絶され、登録にあっては放棄しなければならない。

米国内で商標を使用したい希望、登録を維持したい希望があったとしても、使用していなければ権利は維持することはできないのである。

Fraud(虚偽宣誓)のリスク

このような使用宣誓書実務であるが、出願人・権利者が宣誓書に署名して、使用証拠を提出しさえすれば、米国特許商標庁はそれが真実か否かまでは確認することはない。すなわち、宣誓さえされていれば、内容は真実であると取り扱われるのである。したがって、これまでも、実際には米国内で使用していないのにもかかわらず、意図的に、もしくは誤って、宣誓書が提出されることが行われていた。

このような虚偽宣誓(Fraud)については、取消審判の段階で審判請求人から取消理由として主張されて露見するのであるが、少し前までは、審判部はFraud行為に対してとして厳しい姿勢を取ってきた。特に、使用商品の虚偽宣誓について「それが虚偽であることを知っていたか、または知るべきであった」場合にはFraudとして登録全体が取り消された2003年のMedinol v. Neuro Vasx Inc.を契機として、実際に登録取消となるケースが相次いだ。しかしながら、2009年の判決(In re Bose Corporation、 No. 08-1448)により、Fraudを構成する要件が明確化されて「誤って宣誓した場合にはFraudとされない」との立場が示され、具体的には「米国特許商標庁を騙そうとした明らかな証拠が無い限り、Fraudとはならない」こととなった。実際のところ「米国特許商標庁を騙そうとした明らかな証拠」の存在を立証することは難しいため、Fraudが認定されることは殆ど無くなったと言える。ただし、これを覆す判決が今後出る可能性もあるため、引き続き注意がで必要ある。

米国の使用宣誓書は、どれくらい正しく提出されているのか?

ところで、Fraudのリスクは緩和された実情はあるものの、実際のところ、米国の使用宣誓書は、どれくらい正しく提出されているのだろうか?

これについては、少し古い話にはなるが、2012年に米国特許商標庁が行った「パイロットプログラム」の報告書(2015年8月)が、とても興味深い結果を示している。このプログラムでは、同一区分内で2つ以上での指定商品・役務を持つ登録の使用宣誓書(登録後5年から6年次に提出するもの)について、米国特許商標庁がそのうちの500件を無作為に抽出し、「本当に全ての商品・役務について使用されているのか」という観点から、その正確性が調査された。調査で不正確であると認定された場合には、直ちにペナルティが課される訳ではないものの、事実に沿って宣誓書の内容を補正することが求められる。

その結果が示すには、何と51%の登録については、不正確な宣誓であると認定されたのである。具体的には、35%の登録については、不使用の商品・役務が使用されているものとして宣誓されていたため、該当する商品・役務の削除が行われた。さらに16%の登録については、庁からの指摘に対して何ら応答が無かったため、そのまま登録放棄となった(おそらく、全く使用していなかったのだろう)。

意外というか、やはりというか、「しっかりと精査して使用宣誓書が提出されたものばかりではない」ということなのであるが、上記のとおり、いつFraudのリスクが再燃するか分からないので、この調査結果に勇気づけられることなく(!?)、正確な宣誓を心がけなければならない。

P.S. この記事を書いていましたら、開業祝いにいただいたお花から、突然蝶が飛び出してきました。なかなか部屋から出ていかないので、しばらくは蝶と一緒です。

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